
健康診断の結果が出た。最近はすっかりデジタル化され、紙での郵送はなく、Web上で確認した。
今回一番気にしていたのは、ヘモグロビンA1cの値。結果は問題なしで、まずはひと安心だった。
この検査を最後に受けたのは、2023年7月。奈良に住んでいたころ、定期的に通っていた病院でのことだ。その後、大阪へ引越し、検査が怖いということもあり、新しい病院は探さなかった。
派遣会社(R社)を通じて受ける健康診断では、この検査項目が含まれていなかった。これまで何度かR社で健康診断を受けたことがあるが、一度もヘモグロビンA1Cは検査はなかった。検査内容が病院によって異なるのか、あるいはコストを抑えた簡易的な健診なのかはわからない。
だが、糖尿病を不安に思っていた自分にとって、この項目がないことはずっと気になっていた。
人は「思い込み」で現実を体験するという話
死刑が決まっている人に、「痛くない方法」で処刑をすると説明し、了承を得て実行するという実験の話を思い出した。
実際には、体をほんの少し切り、血が流れているような音を聞かせるだけで、大した出血はない。しかし、被験者は本当に出血し、死に向かっていると感じるのだ。強い思い込みや暗示が、身体の感覚や反応にここまで影響を与えるのかと驚かされる。
歯茎が腫れたのは自分の思い込みからなのか?
歯科医院はコンビニより数が多く、収益を上げるのが難しいと言われている。そのため、自費診療をすすめる傾向があるという話はよく聞く。
過剰に心配させる歯科医院
東京に引っ越してから、歯のメンテナンスのために歯科医院を探し、よさそうなところを見つけて受診した。最新機器が整っていて、最初は安心したが、今思えば過剰な設備だったのかもしれない。
そして、治療が必要な箇所を次々と指摘された。儲けられそうな場所を探していたのでは、と感じてしまった。
私はクリーニングのつもりで行ったのに、一度では終わらず、「歯茎のチェックが必要」と言われて次回の予約を勧められた。どこも悪いところはないと思っていたのに、「私の歯茎、ダメなのかな」と不安にさせられた。
言われた通りになったのか
そんなとき、思いがけない出来事が起きた。
梅干しの種を実と間違えて思いきり噛んでしまい、歯茎が腫れてしまったのだ。もはや最初の歯科医院は信用できず、別の歯科医院を受診。結果、なんと歯が折れていたのだった。→ 歯が折れたその後の話
糖尿病予備軍は何だったのか
2021年12月に受けた健康診断で「糖尿病予備軍に相当します」と書かれていたことがある。参考:3週間でマイナス5kg減った
ストレスが原因か
たしかに、食生活は褒められたものではなかった。でも、家族に糖尿病の人はいないし、自分自身も太っているわけではない。だから、なおさらショックだった。
でも今ならわかる気がする。あのときの私は、「糖尿病が怖い」という気持ちがあった。それに加えて、たぶん本当は、仕事を辞めたかったのだ。
数値は変わらず
健康診断の結果を知った後、通院を始めた。栄養士の指導も受けた。でも、数値はまったく改善しなかった。
今思えば、かなりの医療費を使っていたと思う。しかも、そのうちの一つの病院には、足の手術で入院して退院した直後、タクシーで行った。その日のことは、今でもよく覚えている。というのも、病院へ行ったその日、近くで元安倍首相が銃撃されたからだ。→ 退院後に病院へ行ったらヘリコプターがたくさん飛んでいた
その後、私は仕事を辞め、雇用保険(失業保険)を受け取りながら、Eラーニングの職業訓練を受講した。自宅学習メインの生活は、思っていた以上に快適だった。このまま続いてほしいと思っていた。
すると、数カ月後の検査で数値が改善していた。医師は言った。「これはストレスが原因だったのかもしれませんね。」
通勤時間が長すぎてイライラしていた
思い返せば、当時の私は、残業もしていないのに帰宅が19時過ぎる毎日で、イライラしっぱなしだった。仕事は9時から17時までだったが、17時ぴったりに帰宅できたことはなく、帰宅時間はたいてい19時を過ぎていた。
あまりにも通勤がつらくて、途中から勤務開始時間を1時間早めてもらった。朝8時開始にしてもらい、それに合わせて朝5時45分には家を出ていた。起床は4時半。正直、毎日がしんどかった。
今でも覚えている。通勤時、バス停の近くで撮った写真がある。真っ暗なので、一見すると夜のように見えるが、あれは「朝」だった。

そんな自分が、無意識に「病気」を言い訳にして、環境を変えようとしていたのかもしれない。

いまの私
現在の通勤時間は、短くはない。乗り合わせが悪いので、あえて歩いている部分も多く、片道トータルで1時間。そのうち40分は歩いているので、運動不足の解消になっていると思えば悪くない。
しかも、在宅勤務がある。実際にはほとんど会社に行っておらず、生活リズムはだいぶゆったりしている。
仕事そのものは、正直なところ、思っていたのとまったく違い、面白みを感じることは少ない。自分の得意なことを少しずつ盛り込むことで、なんとか前向きにこなしている感じだ。時給は安いけれど、在宅勤務の快適さを思えば、これくらいでちょうどいいのかもしれない。
そもそも、この仕事は期間限定で、もうすぐ契約終了だ。だからこそ、必要以上にストレスを感じずに済んでいるのかもしれない。
食事については、あの頃のように厳しく制限してはいない。むしろ今は「食べたい放題」に近い。でも不思議なことに、落ちてしまった体重は戻っていない。高齢になると、痩せすぎは老けて見えるというし、もう少し体重がほしい。
それでも、気になっていたヘモグロビンA1Cの値は、ちゃんと改善されている。
結局、なんだったんだろう?
振り返ってみると、糖尿病予備軍の診断も、歯のトラブルも、心や環境が抱えていた問題のサインだったように思える。
あるいは、単なる思い込み。怖いと思っていることが、実際に起きてしまう。そう信じていたから、そうなっただけかもしれない。
思い出したのは、昔買った『心配事の9割は起こらない』という本。なんと私は、その本を2回買っていた。1回目に買ったことを忘れて、また買ってしまったのだ。よっぽど私は心配性なのだろう。
でも今は思う。起きてもいないことを心配するのは、無駄すぎる。そして、起きてほしくないことを想像するのも、実はとても危険だ。
歯のことも、健康診断のことも、そう教えてくれた気がする。
「悪いことを想定しておけば、実際に起きてもダメージが少ない」と思う癖が、たしかに自分にはある。けれど、それが現実を引き寄せてしまう可能性もあるなら、やっぱりやめたい。これからは、起きてほしい楽しいことをもっと考えて、穏やかに過ごしていきたい。